日本酒の大吟醸酒や本醸造酒の違いは、日本酒ファンでないとなかなか知る機会はありません。
本記事では、いわゆる特定名称と言われる日本酒の区分けや9種類のランク分けについて解説をしていきます。
それぞれで味や香りが異なり、日本酒選びを楽しむために必須とも言える知識なので、ぜひ参考にしてみてください。
日本酒のランクは9種類
現在の日本酒のランクは、大吟醸酒や純米吟醸酒などの8つの特定名称酒と、特定名称酒には該当しない普通酒を合わせた9種類です。
特定名称は日本酒の8分類
特定名称とは、日本酒を造る上で必要となる原料や精米歩合、醸造法などを基準としてできた名称のこと。この名称はさまざまなメーカーで統一された基準です。
精米歩合は、米の磨き加減
精米は米を磨くことを意味する言葉。玄米を精米してどのくらい残すかを割合(%)で表したものを精米歩合(せいまいぶあい)といいます。
精米歩合が小さくなればなるほど、多くの部分が削れたということ意味します。
日本酒の原料について
日本酒の原料は主に米・水・米麹・酵母菌・乳酸菌。
ですが、商品によってはこれ以外の原料も使われています。
最も多いのが、醸造用アルコールです。
醸造用アルコールとは、主にサトウキビを原料として発酵させた純度の高いアルコールのこと。糖や酸による雑味の部分を抑えてくれるため、飲んだときに感じる、すっきりとした爽快感が特徴です。
日本酒ランク9種類を解説
日本酒を9種類のランクに分けて、それぞれの特徴を解説します。純米大吟醸酒
- 原材料:米、米麹
- 精米歩合:50%以下
すっきりとした味わいになる傾向があり、日本酒を初めて飲む方や飲み慣れていない方にとっても飲みやすくおすすめです。
一方、お米を多く削って造るため、値段も比較的高いで傾向があります。
純米吟醸酒
- 原材料:米、米麹
- 精米歩合:60%以下
純米大吟醸酒よりも米のほんのりとした甘みとうま味が口の中に広がり、バランスの良く、こちらも飲みやすいのが特徴。
さらに、純米吟醸酒は10度から25度くらいで飲むと米の風味を1番感じやすくおすすめです。
大吟醸酒
- 原材料: 米、米麹、醸造用アルコール
- 精米歩合: 50%以下
大吟醸酒は米,米麹,水に加えて、醸造用アルコールを用います。
精米歩合が低いので、日本酒の香り高さや透明感を感じることができ、サラッと飲みやすいのが特徴です。
特別純米酒
- 原材料: 米、米麹、醸造用アルコール
- 精米歩合: 60%以下または特別な製造方法
特別な製造方法は、明確に決められているわけではなく、蔵元の判断に任されています。
例えば、農薬、化学肥料の使用を抑えた特別栽培米を原料にしているものや長期低温発酵で造られているものなどが挙げられます。
蔵元のこだわりを一層味わいたい方へおすすめです。
純米酒
- 原材料: 米、米麹
- 精米歩合: 規定なし
存分に米の甘みやうま味を感じることができ、日本酒の自然な香りを楽しめるのが特徴。
純米酒は米と米麹、水だけで造られているので米に合う料理全般に合います。和食はもちろん中華、洋食なども相性が良いです。
特別本醸造酒
- 原材料: 米、米麹、醸造用アルコール
- 精米歩合: 60%以下または特別な製造方法
特別純米酒と同様、銘柄によって、さまざまなこだわりがある日本酒です。
味わいはすっきりとしたものや濃厚なものまで多種多様。味や香りの幅が広いので、お気に入りのものを探してみてください。
本醸造酒
- 原材料: 米、米麹、醸造用アルコール
- 精米歩合: 70%以下
純米酒に近い風味と香りですが、醸造アルコールを使用しているため、純米酒よりもすっきりとした淡麗ものが多いです。
お米による濃厚な風味と醸造アルコールによる爽快感を同時に味わいたい方におすすめ。
また本醸造酒は飲み方の幅が広いことも特徴で、特に15度〜50度で楽しめます。
吟醸酒
- 原材料: 米、米麹、醸造用アルコール
- 精米歩合:60%以下
大吟醸酒のすっきりとした味わいと、本醸造酒のお米のまろやかな風味のコントラストが特徴です。
普通酒(例外)
普通酒は特定名称酒には入りません。
上撰や佳撰というラベルが瓶に貼られているような日本酒や、パックのお酒、ワンカップのお酒などがこちらに該当します。
コンビニエンスストアやスーパーマーケットで販売していることが多く、気軽に日本酒を楽しみたいという方におすすめです。
日本酒ランクの歴史
現在の特定名称にいたるまでのランク付けの歴史をご紹介。ただし、諸説ありますので、参考としてご覧ください。大正時代(1912年~)
19世紀後半から20世紀前半にかけて、日本酒が庶民にも浸透するように。
この頃の政府は、自製酒の製造を禁止し、酒税を制定。 当時の国税収入額第1位は酒税でした。
昭和時代(1926年~)
1937年、日本と外国の戦争が激化する中で、兵士の軍需や干ばつが原因で、米不足となり、需要と供給のバランスが崩れ、「金魚酒(水で薄めた酒)」などの粗悪品が流通するように。
1939年、政府は価格等統制法でアルコール度数や原エキス分で分類し、公定価格を制定。 このときのランク付けは平等、中等、上等というものでした。
1940年、酒税を徴収する目的で酒税法を改正。
1943年、等級制度が定められます。初期は1級から4級の分類。 戦後から特級(優良なもの)、1級(佳良なもの)、2級(それ以外、審査を受けていないもの)となりました。
1963年頃、階級別に公定価格を制定し、1964年には日本酒の販売価格を自由化。 専門家による味、色、香りの審査があり、例えば、色のついていないものは不良扱いになることもあったそうです。
ただし、消費者はあくまでも審査は税務上の分類でしかなく、品質が良いか悪いかは関係ないと反発。 そこで、良品が審査を受けずに2級酒の扱いをする「無監査酒」を販売するようになりました。
平成時代(1989年~)
1990年、新たに「特定名称酒」制度が導入されました。
その後、1992年に等級制度が廃止になり、旧特級→特撰、旧1級→上撰、旧2級→佳撰という階級に変更。
この「特定名称酒」制度が現在も利用されています。
特定名称酒別のおすすめ日本酒を紹介
ここからはそれぞれのランクのおすすめ商品をご紹介します。作 智(さとり)<純米大吟醸酒>
「作 智純米大吟醸 滴取り」は国内外で多くの受賞歴のある清水清三郎商店の純米大吟醸酒。
こちらの商品もフランスのKura Master2020にて最高賞のプレジデント賞を獲得しました。
作「智」は一回の仕込みで少量しかお酒がとれない「滴取り」で造られ、非常に希少な日本酒の1つです。
透明感にあふれた極上の1本で、贈り物にもおすすめです。
- 三重県
- 精米歩合:40%
- おすすめの温度帯:10℃前後
伯楽星 純米吟醸 <純米吟醸酒>
「伯楽星 純米吟醸」は、食事と合うように香りや甘みを極力抑えて醸されているため、飲みやすくつい食事も盃も進んでしまう、初心者にもおすすめの純米吟醸酒です。
宮城県産の酒造好適米「蔵の華」を使用し、滑らかな口当たりが特徴的で、3杯目あたりから徐々に旨味が増していきます。
- 宮城県
- 精米歩合:55%
- おすすめの温度帯:10℃前後
石鎚 真精大吟醸 無濾過原酒 袋吊りしずく酒 <大吟醸酒>
西日本一高い山「石鎚山」のふもとに位置する石鎚酒造の「石鎚 真精大吟醸 無濾過原酒 袋吊りしずく酒」。
兵庫県産特A地区吉川産の特上山田錦を35%まで磨き、滴り落ちる雫のみを集めた大吟醸酒。
メロンのような優しい香りと味わいが心地よい、安定感抜群の酒質です。
- 愛媛県
- 精米歩合:35%
- おすすめの温度帯:8℃前後
雨後の月 特別純米 十三夜 <特別純米酒>
「雨後の月 特別純米 十三夜」は雨後の月を取り扱う店の中でもわずか8軒のみが取り扱う希少な特別純米酒。
アルコール度数が13%と一般的な日本酒よりも低く設定されており、非常に飲みやすくなっています。 2016年にはANA全日空国際線のファーストクラスの日本酒にも採用されました。
ここまで透明感があって滑らかな低アルコールの日本酒はなかなかありません。
- 広島県
- 精米歩合:60%
- おすすめの温度帯:10℃前後の冷酒、40℃前後の上燗
七田 純米 山田錦 七割五分磨き <純米酒>
「七田 純米 山田錦 七割五分磨き」は名ならブランドの代名詞ともいえる75%精米の純米酒。
低精米ながら磨かれた味にするというコンセプトのもと造られた商品で、仄かなブドウのような香りと後切れの良さを演出する酸味が特長的です。
山田錦らしい洗練された味わいが表現され、飲みごたえのある酒質に仕上がっています。
- 佐賀県
- 精米歩合:75%
- おすすめの温度帯:12℃程度の冷酒、50℃前後の熱燗
愛宕の松 別仕込本醸造 <本醸造酒>
「愛宕の松 別仕込本醸造」は、ロンドンでおこなわれたIWC2022(インターナショナルワインチャレンジ)の本醸造酒部門で最高賞であるトロフィー賞を受賞しました。
アルコール感を感じさせない口当たりで飲みやすく、後味もキレがありすっきりとしています。
「愛宕の松」シリーズの中でも特定のルートしか卸さない限定流通品です。
- 宮城県
- 精米歩合:60%
- おすすめの温度帯:10℃前後の冷酒、40℃前後の上燗
喜久酔 特別本醸造 <特別本醸造酒>
喜久酔 特別本醸造は穏やかな香りと上品な甘み、キレの良い喉越しが特長的な特別本醸造酒。
地元静岡産の酵母を使い、きわめてクリアな酒質に仕上がっていて、冷酒から熱燗まで様々な温度帯で美味しくいただけます。
- 静岡県
- 精米歩合:60%
- おすすめの温度帯:冷酒、常温、ぬる燗(40℃)
陸奥八仙 ピンクラベル 吟醸 <吟醸酒>
陸奥八仙 ピンクラベル 吟醸は蔵元のある青森県のお米を使用して造られた吟醸酒。
メロンやバナナのような芳醇な香りと旨味が口の中に広がっていきます。
日本食のみならず洋食にも合わせやすく、シーンを問わずに飲みやすい1本。
- 青森県
- 精米歩合: 55/60%
- おすすめの温度帯:冷酒、常温
まとめ
日本酒は主に9種類のランクに分けることができます。そのうち、8種類は特定名称酒と呼ばれるものです。
初めはよく分からないものも多いと思いますが、飲み比べているうちにすぐに馴染む分類なので、少しずつ覚えていきましょう。